オフセットスマイル
「皆様、時間調整のため、本バスは40分間ほど停車致します。斜め向かいにコンビニエンスストアもありますので、ご利用の方はお申し出下さい」
口から吐き出される、平べったい隙間を通ってきた生暖かい息を、ことごとく拾う。増幅された運転手のアナウンスが入ると、周りの席から、眠りから強引に引き戻されたのか、ほんの少し不機嫌なざわめきが起きた。
窓の端の方で溜っていたカーテンを下からめくると、運転手の言う通り、交差点の向こうに、小さい店ではあるが、確かにコンビニエンスストアがあった。
バスは何故か右斜線の道路沿いの広い側道スペースに、進行方向のまま停車されていた。
他の何人かの後について、僕も腰をあげた。僕の後ろに人はいなかった。タラップからゆっくりと片足ずつ地面に着け、僕はバスの扉が閉まる音を聞いた。
外は少し肌寒かった。
風も、全く無い。
吸い込んだ空気が気道を通り、肺を満たす。
ガラス窓を通して見た感覚と違い、気温や空気の緊密さまで感じる。
道路を横断した。車が来ていないことを確認した後、アスファルトの割れ目を見て歩いたせいか、そのまま下を向いて、店の中に入る。
ピンポーン。
来客を知らせる電子音が、頭上で鳴った。
防犯カメラが、僕の姿を捉える。赤色の発光ダイオードが、監視してますよ、と言わんばかりに、不適な放射線上の光の筋を放出している。
男性の若い店員が「いらっしゃいませ」と客の姿を見もしないで、声を掛けてきたのだが、僕はただ息を吸い込むだけで、何も感じなかった。
口から吐き出される、平べったい隙間を通ってきた生暖かい息を、ことごとく拾う。増幅された運転手のアナウンスが入ると、周りの席から、眠りから強引に引き戻されたのか、ほんの少し不機嫌なざわめきが起きた。
窓の端の方で溜っていたカーテンを下からめくると、運転手の言う通り、交差点の向こうに、小さい店ではあるが、確かにコンビニエンスストアがあった。
バスは何故か右斜線の道路沿いの広い側道スペースに、進行方向のまま停車されていた。
他の何人かの後について、僕も腰をあげた。僕の後ろに人はいなかった。タラップからゆっくりと片足ずつ地面に着け、僕はバスの扉が閉まる音を聞いた。
外は少し肌寒かった。
風も、全く無い。
吸い込んだ空気が気道を通り、肺を満たす。
ガラス窓を通して見た感覚と違い、気温や空気の緊密さまで感じる。
道路を横断した。車が来ていないことを確認した後、アスファルトの割れ目を見て歩いたせいか、そのまま下を向いて、店の中に入る。
ピンポーン。
来客を知らせる電子音が、頭上で鳴った。
防犯カメラが、僕の姿を捉える。赤色の発光ダイオードが、監視してますよ、と言わんばかりに、不適な放射線上の光の筋を放出している。
男性の若い店員が「いらっしゃいませ」と客の姿を見もしないで、声を掛けてきたのだが、僕はただ息を吸い込むだけで、何も感じなかった。