オフセットスマイル
 僕はおもむろに雑誌に手を伸ばした。二本の親指を差し込んで、扇型に力を加えるように左右に開く。

 力を分散させて広げた誌面の先は、見開きのグラビア写真だった。横向きに寝そべったふくよかで小麦色の体。白いビキニ姿の美女のたわわでこぼれそうな胸が、大きく僕の瞳に迫った。


 瞳孔が開いたかどうかは解らない。いや多分、確実に開いていることだろう。

 ただ、脳の芯まで刺激が伝わり、震えるように目が覚めたのは、間違いのない事実だった。


 反射的にズボンが窮屈になった。恥ずかしくなって、僕は一度、雑誌を丁寧に閉じた。

 でも、親指は挟んだままで、また同じ頁を広げようとすれば、直ぐにでも願いが叶う。

 コンビニエンスストアのレジの壁に掛けてあった時計の針は、五時過ぎを差している。


 もう一度、ゆっくりと雑誌を開く。

 夏色に焼けたグラビアの彼女は、僕の心をしっかりと掴み、タイミングを見計らったかのようにウインクをしていた。


「ちゃんと、ご飯食べてね?」


 そんな風に言いそうだが、ギリギリのビキニ姿に顔の毛穴が開き、耳から体の中心まで猛烈に火照る。


 何やってるんだよ。

 バカ。


 水着がずれてはみ出た白いお尻の上に、いる筈の無いヤドカリを乗せたい気分になった。

 何度も言うが、本当にどうかしてると思った。



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