四面楚歌-悲運の妃-
宦官の楚邑藍の所へ行くと、もう1人娘がいた。
あぁ、そうか。
楚殿は隣村の軍妃候補も一緒に探していると言っておられた。
私が室内に入るとすぐに、その娘は仮面をつけた私を見て驚きの表情へと変える。
その娘は慌てて楚殿の顔を見ると、楚殿は苦笑いをうかべた。
「仮面の事は後宮に向かう途中に話そう。
この仮面をつけた娘は琴冥紗。
こちらの娘は憧李燗(ドウリラン)。」
李燗という娘は納得いかない顔をすると、顔を背けた。
仕方がない。
仮面をつけた娘を嫌がるのは当たり前。
李燗と一言も話す事なく、後宮へと出発した。
楚殿と李燗と私の3人は馬車に乗って都まで向かう。
楚殿が言うには後宮に着くまで、5日かかるという話だ。
馬車の中で、怪訝そうな顔をしていた李燗が口を開いた。
「楚殿、軍妃とはいえ天子様の妃なのでしょう。
なぜ、この様な仮面の娘を選ばれたのです?」
気になってしょうがなかったのだろう。
溜まってたものを吐き出す様に、勢いよく言った。
それに対して楚殿は、いきさつを話す。
話が終わり、今まで顔を背けていた李燗が、私に視線を向けた。