四面楚歌-悲運の妃-
偉罨様は炎の麒麟の背に飛び乗ると、私や陛下に向かって別れの言葉をかけ、空高く舞い上がった。
炎の麒麟が空を舞う姿はいつみても美しい。
「良い経験になりましたか?」
急に范丞相に声をかけられ、肩が揺れる。
振り返ると、范丞相は笑顔で私の顔を覗きこんだ。
『は、はい。とても。』
急いで笑顔で答えると、范丞相は満足したようにニコっと笑った。
「聖人に褒められる妃など、そういまい。私にとっても、冥紗は自慢の妃だ。今日はたいぎであった。」
陛下が玉座から降りると、私に近づくと言った。
陛下が喜んでくださって良かった。
怪しまれたのではないかと、少し不安だったけれど…。
「疲れたであろう?ゆっくり休むが良い。」
陛下に深く頭を下げると、謁見の間を後にする。
近くで待機していた、威仔を連れて後宮に戻る中、私は偉罨様との会話を思い出していた。
敵国がいつ攻めてくるかわからない…
宮中でも命を狙われる陛下
せめて宮中だけでも、安心させてさしあげたい。
まずは稚皇太后と呂貴妃の問題から、おさめていかなければ…。