四面楚歌-悲運の妃-
∴火種
翌日、散妃ノ宮へ威仔を使いとして送った。
稚皇太后や呂貴妃にではなく、呉淑妃にだ。
先帝崩御後に、残った妃3人の内唯一、傍観者である呉淑妃。
まずは、先帝の後宮での話を聞く事にしたのだ。
警護だけしていても、争いはおさまらない。
何でもいい。
少しでも無血で解決できるのなら…。
「琴昭儀様。崔皇后様がお会いしたいとの事です。」
中々帰ってこない威仔を待ってると、崔皇后様の女官が言伝てに来た。
何もせずに待っているよりはいいか…。
崔皇后様は陛下の皇太子時代からの妃だ。
何か知っているかもしれない。
女官に会う事了承すると伝え、皇后宮に行く準備をする。
軽装で、皇后様にお会いするわけにはいかない。
威仔がいたら、必要以上に着飾れてたな…。
皇后様より質素であり、失礼のない程度。
髪は軽く結い、少しの髪飾り。
他の妃なれば、もう1人女官がいて、準備をするのだろうけど、私には威仔だけしかいない。
初め私の元には、3人の女官が付いたのだけれど、初日に1人で構わないと断った。
今まで1人で何もかもしてきたのだ。
手伝われずとも、これくらいなら1人で出来る。