四面楚歌-悲運の妃-
皇女であれば、争いに巻き込まれる事はないと
そういう事を言っておられるのだろうか?
「稚皇太后様は、私が郢節を生んだ後も、前とは変わりませんでした。私が争い事を好まぬ事を知っておりましたし、呂貴妃様程の敵意には値しなかったのでしょう。
けれど、呂貴妃様は違ったのです。
いくら温厚な私とて、人とは分からぬもの。私が第2の稚皇太后になるのではないか…そう思われたのでしょう。」
意外だった。
稚皇太后様も呉淑妃を敵視しただろうと思っていた。
けれど実際は呂貴妃様だけが、呉淑妃を敵視した。
第2の稚皇太后…
当初は呂貴妃様より、官職が下であった稚皇太后様が、皇子を生み見事な逆転をした…
その稚皇太后様よりも、上に行きたい呂貴妃様は
これ以上の邪魔者が増えるのは厄介。
権力をつける前に、消しておきたい…そういう事に違いないだろう。
「敵意を向けて来た呂貴妃は、郢節を生んでまもなくした頃、私に言いました。
[そなたの妹が私の弟に嫁ぐ事が決まったそうだ。妹が上流貴族の我が呂家に嫁げば、中流貴族の呉家の繁栄に繋がりましょう。なにより、優雅な暮らしに妹も幸せになる。その意味をおわかりか?]と…。」