四面楚歌-悲運の妃-
呉淑妃様の声は震えていた。
呂貴妃様から受けた言葉が、聞かなくてもどんな事が分かる。
なんて酷い事を…ッ
妹は人質だ。
なんて事を…
崔皇后様の顔も、話を察して歪む。
「呉家は中流貴族とはいえ、財は底をついていました。
父の後妻が、豪華な暮らしを好み、使い果たしてしまったのです。
その後、父は後妻と離縁しましたが、使われてしまった財は戻るわけではなく。
貧しい暮らしでした。
父や妹とを助ける為に、私は後宮に入り、陛下の寵を頂き、郢節を授かり…
呉家に昔の様な日々が訪れると、思っていた矢先でした。」
呉淑妃の実家の事情を知った上での策略だろう。
そうする事によって、何も出来ぬ様に縛りつける。
陛下を亡き者にしようとしている呂貴妃様からすれば、雑作にない事だろう。
家や家族を人質にするなど…あまりにも酷すぎる。
呉淑妃にかける言葉も思いつかない…
人を…陛下を殺めてでも
どんな事をしてでも
手に入れたい
帝位と権力…
私には一生理解できない。