四面楚歌-悲運の妃-
「ねぇ、楚殿。
太子殿下の事教えてくださらない?
軍妃といっても私達は妃になるのだから、嫁ぐ方の事を知りたいわ。」
李燗の言葉に私も賛同し頷く。
それは私も知りたい。
私が知る皇太子は、黄宋帝の一番目の皇子である吏祇公子だった。
あの優しい公子様がなぜ皇太子になったのか疑問だった。
「太子殿下の名は稜稟様という。
母上は黄宋帝の2番目の皇后・稚太后(チタイゴウ)様。
太子殿下は黄宋帝の3番目の公子様だ。」
稚太后?
楚殿がそれから話したのは、上2人の公子様の死と前皇后の死で、
稜稟公子様は皇太子となられ、稚貴妃様が皇后となった事だった。
「まことに運が強い母子でいらっしゃる。
前皇太子は皇后腹であったし、2番目の公子様は貴妃腹であったから、お亡くなりにならなければ、皇太子になられる事はなかったのだ。」
宮廷では私達が知らない間にそんな事が起こっていたのか…。
都に住んでおる者は知っている事であろう
私がいたのは都から遠く離れた村
都の事など伝わってこない。
聖人の村に居れば知っていただろうが、聖人の村を出た私には知るはずもない事だった。