四面楚歌-悲運の妃-
数刻後、使いの宦官が私の元へやって来た。
その宦官と2人で、一先ず黄妃門まで行く。
その間、范丞相からの詳しい護衛内容を宦官が教えてくれた。
まず、黄妃門にて汪軍妃官軍と恢長公子様付きの宦官と合流。
その後黄麟門を出て、都・黄淋内にある櫂家へ狄洙様を迎えに行く。
そして狄洙様を連れて恢長公子様の元へ行く。
これが大まかな段取りだ。
言葉にすれば簡単な事だが、実際はそうもいかないだろう。
「ここからは、お一人で行ってください。」
宦官の言葉で我に返る。
考え事をしながら歩いていたら、いつの間にか目の前は黄妃門だった。
黄妃門を警備する宦官が、重たい門の扉を開ける。
開けられた扉の向こうには、20人ぐらいの宦官達が、頭を下げてまっていた。
「お待ちしておりました。琴軍妃将軍様。」
頭を下げる宦官の中で、中央に立つ位の高い宦官が言った。
あれ…この声、どこかで…
そう思ったと同時に、その宦官はゆっくりと頭を上げた。
!!
『そ…楚邑藍殿ッ!!』
楚殿はにっこりと笑い、小さく頷いた。