四面楚歌-悲運の妃-



さっきまでとは違い、急に顔をひきしめ頭を下げた。


「琴軍妃将軍様はこちらの新馬に乗って頂き先頭を行ってもらいます。
恢長公子様に代わりましての迎親の護衛、よろしくお願いいたします。」


楚殿の言葉に他の宦官も頭を下げる。


私も頭を下げると、馬にまたがった。


道案内をする宦官が私の横に立ち、後ろに楚殿が乗った馬・数名の宦官・狄洙様がお乗りになる輿・数名の宦官


といった並びがさっとつくられる。


私はそれを一度見渡すと、真っ直ぐ前を向き、手綱を強く握って言った。



『出立ッ!』



私の言葉で迎親の行列はゆっくりと黄妃門から動き出す。



やがで黄麟門を抜け、都・黄淋の街中に入る。


数ヶ月前に見た時と変わらぬ賑やかな風景。


道行く人は皇旗が掲げられた私達迎親の行列に、頭を下げる。


先頭を行く私を見て驚く者もいるが、焦った様に頭を下げる。


平民とて、私の仮面姿は恐ろしい…



狄洙様は大丈夫なのだろうか…?


今さら不安になる。


この様な形相の者が護衛だと、逆に安心なさってくれると嬉しいのだが…。


不安な気持ちをよそに、行列は櫂家の正門へとたどり着いた。



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