四面楚歌-悲運の妃-




楚殿と私は馬から降りると、櫂家の門をくぐる。



待っていた使用人に案内され、屋敷に入る。



上流貴族だけあって屋敷は広く豪華だ。



これから狄洙様の父上であれる、櫂嗣永(カイシエイ)様に迎親の挨拶をしにいくのだ。


使用人に案内された部屋に入ると、狄洙様とご両親が待っていた。



私と楚殿は頭を下げ、楚殿が迎親の挨拶を恢長公子様に代わって申し上げていく。


挨拶が終わると、楚殿は護衛をする私を紹介した。



『黄麟城までの道中狄洙様を護衛いたします、黄秦帝後宮軍・軍妃将軍・琴冥紗でございます。』


紹介の挨拶をすると、嗣永様は頭をあげる様に言った。


ゆっくり顔をあげる。


まず私の目に入ったのは、目の前の美しい狄洙様が驚き顔を歪めている姿。


やはり…


この仮面なればしかたがない。


狄洙様から目を離し隣のご両親に目をやると、母上様も狄洙様の様に驚き顔を歪めている。


嗣永様は…と目をやると、驚いている様ではなかった。


「ほう…これはこれは。
噂は聞いております、仮面の軍妃将軍様。
まさか、貴方様に護衛をして頂けるとは、これまたありがたい話。」


嗣永様は私に小さく頭をさげにこやかに言う。




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