四面楚歌-悲運の妃-


その後も後宮へ向かっている間、馬車の中で楚殿は色んな話をしてくれた。


稜禀公子様は武術も学問もお出来になる麒麟児で、天子様になるのにふさわしい方なのだそうだ。


今宮廷内で権力を持つのは、先帝・黄宋帝の時よりの、右(ウ)の丞相(ジョウショウ)・范 夷扶(ハンイフ)。


范丞相は稜禀公子様の母上様である、稚皇太后の家系稚氏との繋がりがあり、稜禀公子様にとっては力強い後ろ楯なのだそうだ。


黄宋帝の後宮は崩御により解放され、黄宋帝の皇子を生んだ皇太后と貴妃と淑妃の3名だけが、今もなお黄宋帝在位時の地位を保ち、後宮に残っているという。


と言うような、色んな話を聞いた。


村を出て10日目。


いつのまにか仲良くなった李燗が私に問うた。


「冥紗はその仮面をつけたまま官職を賜るつもりでいるの?
強いだけではだめなのよ?」



『官職を受けるまで、仮面をとってはならないと決まっている。
なんとしてでも、賜りたい。』


私がそう言うと、李燗は不安な顔をした。


そんな李燗の顔を見て、楚殿は口を開いた。


「後宮に入ったらまず、武術の修行と後宮についてを学ぶ。
それから官職を賜る。
本来なれば仮面をつけた者など、たとえ軍妃といえど後宮にはいれぬ。
しかし天子様の為を思い、冥紗を選び連れてきた。
私の出来る限りをしてみよう。」




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