四面楚歌-悲運の妃-
まさか、呂貴妃様にもお会いする事になるとは…
少し戸惑いながらも、呂貴妃様と恢長公子様に目をやる。
花嫁である狄洙様に負けんばかりの、豪華な衣裳を纏う、美しい女人。
先帝の寵妃だった事が、その容姿から滲み出ている。
隣で微笑む恢長公子様は、呂貴妃様と良く似ておいでだ。
「櫂狄洙でございます。
恢長公子様…末永くよろしくお願い致します。」
狄洙様は震えた声で、挨拶をする。
恢長公子様だけならまだしも、呂貴妃様もおられるのだ。
無理もない。
「そう緊張なさるな。
私達は今日より夫婦になるのです。」
緊張する狄洙様に、恢長公子様は優しく笑顔で話かける。
その言葉に少し緊張がとけるものの、狄洙様は視線をあげれぬまま微笑む。
無表情で自分を見る、呂貴妃が気になるのだろう。
そんな狄洙様を見て、呂貴妃様はフッと小さく笑う。
「恢長の言う通りじゃ。
そなたは今日より皇族の一員。
堅くなる事はない。
せっかくの美貌が台無しになってしまう。」
呂貴妃様の笑みの混ざる言葉に、強張っていた狄洙様のお顔が、柔らかくなる。