四面楚歌-悲運の妃-



狄洙様に安心を与えた呂貴妃様のその笑みの裏に、陛下の暗殺を狙っているとは思えないほどだ。


呂貴妃様は狄洙様に向けていた視線を離すと、私に視線を移した。



仮面姿の私を見ると、袖を口元にもっていき、顔を歪めた。


もう慣れた事だ。
誰もがこの姿を見れば、顔を歪める。


呂貴妃様が私を見つめるのに気付き、恢長公子様も私に目を向ける。


恢長公子様は私の仮面姿に、一瞬目を細めるが微笑み口を開いた。


「琴軍妃将軍、噂に聞く仮面の軍妃将軍に会えて光栄だ。
このたびは、迎親の護衛をしてくださり、私の元に無事に狄洙を送り届けてくださった事、礼を言う。




『いえ、この様な大役を仰せ付かり光栄に思います。』


頭を深く下げ言葉を返すと、恢長公子様は右手を軽く上げ頷く。


呂貴妃様と同じく、謀反を起こすかもしれない人物であるとは、感じさせられない方だ。


この数刻だけでは、裏までは見抜く事はやはり出来ない。


表面だけ…


顔を上げると、呂貴妃様と視線がぶつかる。


目を細め、鋭い視線で私を見る。



「恢長よ、礼を申さなくてもよいわ。
この様な者に迎親の護衛を任せるなど、范夷扶もどうかしておる。」



え?



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