四面楚歌-悲運の妃-


突然放たれた言葉に、恢長公子様を含めたその場にいる者が、呂貴妃様を見る。


皆の視線など気になどせず、私に鋭い視線を向けたまま立ち上がり、ゆっくりと私の前に立ちはだかる。


!?


前に立つ呂貴妃様に、床に手を付きひれ伏す。



「仮面など付けおって、無礼にも程がある。
軍妃将軍なれど、庶民の出じゃ。
陛下の妃故、良いとおもうたか?
良く妾(ワラワ)の前に出れたものよ。
その様な者を、櫂家へ使わし、迎親の護衛をさせるとはッ!」



言葉を勢い良く吐き出したかと思うと、ひれ伏す私の手を足で踏み潰す。


『…ッ!?』


ギリギリと踏まれ、次第に血が滲む。


なぜ私を急にこの様に!?

ここで私が無礼を働けば、陛下や范丞相になんと言えばいいか…ッ


声をこらえ、痛みに耐え、ひれ伏す。



恢長公子様と楚殿が慌てて呂貴妃様を止めにはいる。


恢長公子様のおかげて、手から足が退かれる。


手から血が垂れ、赤い敷物をさらに赤く染める。


「なぜ止めるのじゃ!?
知らぬ様だから教えてやっておるのだ!
仮面の軍妃が迎親の護衛を、する身分でないと!
軍妃将軍よ!
櫂家がどれ程格上かご存知か?」


恢長公子様に止められながらもなお、私に吐き捨てる。


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