四面楚歌-悲運の妃-
櫂家が上流貴族である事を、范丞相に聞いて迎親の護衛の任を承った事など、聞かなくとも分かるはずだ。
呂貴妃様のこれが内面…。
私が気に入らぬのだ。
仮面も…
軍妃将軍も…
何よりも陛下をお守りしている事が…。
『上流貴…ッ!?』
言葉を返そうとした時、恢長公子様の腕を振り払った呂貴妃様の足が
再び私の手を踏みつける。
…ッ!!
ゆっくりと顔をあげ、呂貴妃様の顔を見上げると、不敵に笑い口を開く。
「教えてやろう。
櫂家はそこらの上流貴族ではない。
聖人を…今の七神・生姫の生家ぞ!!」
…!?
な…に…?
なんと言われた?
七神…生姫の…
生家だと!?
私はゆっくりと、視線を呂貴妃様から狄洙様へと向ける。
呂貴妃様の姿を見て怯えておられる
今日、恢長公子様に嫁がれた狄洙様
では、狄洙様は…私の…
姉上?
迎親の際に会った、狄洙様のご両親を思い出す。
あの方たちは…私の父上と母上?
胸の鼓動が速まり、汗が吹き出す。