四面楚歌-悲運の妃-
陛下は優しい。
私なんかの為にも、悲しい顔をしてくださる…。
『これぐらいの傷どうともありません。
范丞相のおかげで、呂貴妃様の裏を垣間見る事が出来たのです。
范丞相にお礼を申し上げます。』
私より顔2つ分高い陛下の顔を見上げる。
私の言葉に悲しく微笑みながら頷くと、私を椅子へと再び座らせた。
その様子を見た范丞相は、小さく溜め息をついた。
「陛下は琴昭儀様には特別お優しい様ですな…。
私はこれて失礼いたしましょう。
またお話致しましょう、琴昭儀様。
では、陛下。」
そう言うと、范丞相は颯爽と出て行ってしまった。
あ…
まだ、櫂家の事でお聞きしたかったのに…
しょうがない。
范丞相は朝から政務などで忙しかったのだ。
また近々お会いして聞こう。
『では陛下、私もこれで…。』
范丞相がいないのなら、私がここにいる意味もない。
頭を下げて、後ずさろうとした時
それを陛下の声で止められる。
「まて。冥紗まで出ていかなくてよい。
なんの為に黄麟殿に呼んだと思っている?
今宵はそなたと過ごす為だ。」
私と…過ごす…?