四面楚歌-悲運の妃-
∴策略
黄麟殿から出ると、入口で待機している壁内侍に呼び止められた。
「范丞相お待ちを。
陛下はこのまま…琴昭儀様と…お過ごしですか?
それでしたら…黄麟殿の警護を、軍妃様方にお頼みしますか?」
壁内侍は少し戸惑いながら問う。
無理もない。
聞かされていないうえに、今日のお相手は軍妃将軍で昭儀であるいえど、仮面を付けた特別な妃だ。
陛下が琴昭儀様をまさか…と、壁内侍が思っても仕方がない。
「そうだ。それ以外で黄麟殿に呼ぶわけなかろう。
警護はいらぬ。
宦官だけでいい。
軍妃将軍が一緒なら問題ないであろう。」
私がそう言うと、「はい。」と言って頭を下げた。
私もそれと同時に歩き出す。
私とて、初めは反対した。
琴昭儀様は陛下への忠誠心も暑く、歴代で一番強い軍妃将軍だ。
陛下のお相手には申し分はない。
仮面さえ…なければ。
本来ならば、軍妃と言えど仮面を付けたモノを後宮に入れる事はしない。
けれど、琴昭儀様は別だ。
琴昭儀様の強さは宮歌国の名のある武人より上だ。