四面楚歌-悲運の妃-


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―――――…



朝の鐘の音が、心地良く響き渡る。


ゆっくりと瞼を開けると、見慣れない天井が目の前に広がった。



あぁ…そうか…


ここは黄麟殿だ。



横を見ると、陛下はまだ気持ち良さそうに眠っていた。



目が覚めて、自室にいたのなら夢だった。


でもここは黄麟殿で、隣には陛下が眠ってらっしゃる。



この後宮へ行く途中、馬車の中で楚殿は問うた


「冥紗、そなたは天子様をお守りする為に軍妃になると言ったが、そなたがもし天子様に寵を頂いたらどうする?」


「もしの話だ。明日には後宮に着く。最後に冥紗に聞いておきたいのだ。」



それに私はこう答えた


『天子様がお望みなれば、お子をお生みします。』



夢物語の様に答えたその答えたは


昨夜、現実となった。



愛しい陛下。


私は多くを望まないと誓った身…


其れ故、


冥紗は…これ程の幸せをどう受け止めればいいのかわかりません。


聖人ではなく、妃として陛下の隣にいれる幸せを…


望んでやまなくなってしまいそうで怖い…


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