四面楚歌-悲運の妃-
陛下を起こさない様に、そっと寝台をおりようとした時、袖をつかまれた。
?!
「どこ行くのだ?冥紗。」
陛下いつの間に…
おろしかけた足を、寝台に戻し少し陛下に近寄る。
まだ少し眠たそうな陛下は、私の袖をつかんだまま、もう片方の手で目をこすった。
その姿はまだ少年で、愛らしい。
私はその姿に顔がほころぶ。
『もう目覚める時間でしたので、着替えようと思いまして。
陛下もそろそろ朝政にいかれる準備なさいますか?』
私が問いかけると、袖を掴んでいた手が離れ、手首を掴む。
え?
掴んだ拍子に私の身体を引寄せ抱きしめられる。
へ、陛下…
「もうその様な刻か…。
もう少しこうして居たいが、遅れると范夷扶が煩いからな…。」
そう言って、名残惜しそうにゆっくり腕をほどき、寝台の横に置いてある小さな鐘に手を伸ばし、垂れ下がる紐を揺さぶる。
心地よい小さな鐘の音が部屋に響く。
その鐘の音を聞いた壁内侍が急いで現れる。
「朝政に行く準備をする。」
「はい、只今ご用意致します。」