四面楚歌-悲運の妃-
「琴昭儀様、遠慮なさる事ないのです。
何色がお好みですか?」
『も…桃色…』
小さく言うと「さぁさぁ。」と最後に一押し威仔が言い、私の戸惑いを無視して女官達は着替えを開始する。
あっという間に豪華な衣装に身を包まれると、鏡台の前に座らせられた。
乱れた髪を綺麗に結い上げていき、最後に髪飾りを付ける。
鏡の中の私は、後宮で着飾る妃達の様だった。
「冥紗。」
呆然と鏡の前で座っていると、急に名を呼ばれ肩が小さく揺れる。
両脇に立つ女官は、声の主に慌てて頭を下げる。
鏡ごしに私の後に立つ陛下が見える。
慌てて立ち振り向き、頭を下げる。
『陛下…。この様にたくさんの品、お礼申し上げます。』
そっと私の顔に触れられる指先
その指先に促される様に、顔を上げる。
「礼など申さなくても良い。
私の気持ちだ。
そなたが着飾る事を嫌がるなら強制はしない。
けれど、私の前だけ良いから、贈った物を着て見せて欲しい。」
陛下は私の頬を指先で撫でながら言う。
陛下…。