四面楚歌-悲運の妃-
陛下と別れ、壁内侍と共に黄麟殿から自室へと歩く。
黄麟殿から黄麟ノ宮を繋ぐ廊下の先に、人影があった?
近付くにつれ、その人影はしだいに露(あらわ)になる。
きょ…う…賢妃様!?
廊下の先で、こちらを見て立つのは、姜賢妃様だった。
…?
壁内侍は姜賢妃様だと分かると、廊下の端に移動し頭を下げる。
私も壁内侍につられる様に端に移動し、頭を下げる。
『おはようございます。姜賢妃様…。』
挨拶をして下げた頭を上げると、姜賢妃様は顔を歪ませ私を睨み付ける。
!?
こんな風に私を睨み付ける姜賢妃様は初めてだ。
私は何か気にさわる事をしてしまったのだろうか?
しばらく私を睨み付けると、壁内侍に視線を移して口を開く。
「昨夜…陛下は、琴昭儀を寝所に呼ばれたのか?」
いつもより低いその声は、背筋が凍る様だった。
姜賢妃様のその言葉に、壁内侍は汗を吹き出したじろぐ。
「あ…その…いえ…。」
はっきり話さない壁内侍に、姜賢妃の顔がさらに歪む。
姜…賢妃…様?
「…はぁ…、へ、陛下は昨夜…琴昭儀様を…お呼びになれまし…た。」
姜賢妃様の無言の圧力に、壁内侍は吃りながら答える。