四面楚歌-悲運の妃-



壁内侍の言葉に姜賢妃様の片眉がピクリと動くと、身体が小刻みに震え出した。

離れて後ろに立つ、姜賢妃様の女官の顔が、その様子を見て青ざめる。


壁内侍に向けられてた視線が、ゆっくり私に向けられる。


ッ!?



姜賢妃様の瞳にとらえられた私は、身体がまるで石の様に固まる。



憎悪の瞳…



今にも噛み付いて来そうな、その瞳に私は目を反らす事も出来ない。



「醜いその仮面で…陛下の床にはべったなど、畏れ多い話…。
そうであろ?琴軍妃将軍?
軍妃は軍妃らしく、陛下と妃達を守っておればいいのです。」



憎悪の瞳で私を睨み付け、冷たく言い放つ。


この方は姜賢妃様なのだろうか?


疑ってしまうくらい、いつもと違う。



優しく話かけてくださっていたのは、私が妃ではなく軍妃であったから…?


警護の時に刺客から守ったから?



否違う…



陛下の寵妃になる可能性がない、醜い仮面の軍妃だったから…


それが正解だろう。



「昨夜は陛下のただの気まぐれに過ぎぬ…。
1度陛下に可愛がっていただいたからと、浮かれぬ様に…。
そうでしょう?
仮面の軍妃将軍。」


何も言わない私に、姜賢妃様はまた冷たく言葉をはく。


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