四面楚歌-悲運の妃-




ここは後宮。


妃達の嫉妬や妬みが渦巻く場所。


私には関係がない事だと思っていた。


たった1度でも、陛下と共に過ごすだけでも


その渦に巻き込まれてしまう。


けれど、私は嫉妬や妬みを抱きたくない。



目を游がせて、気まずそうにする壁内侍を横目に、私はもう1度深く頭を下げ口を開く。



『私の命は、陛下と宮歌国の為にいつでも捨てる覚悟でございます。
何も望みはいたしません。』



私の言葉に、姜賢妃様は〔ふん〕っと鼻ならして、その場を離れた。


姜賢妃様が室に入るのを確認すると、私も壁内侍も肩の力が一気に抜ける。


壁内侍と顔を見合せると、深く溜め息を吐いた。


「…姜賢妃様の言われた事を気になさるな。
陛下は気まぐれで妃を寝所に呼ぶ様な方ではない。
…さあ、琴昭儀様。
室へ戻りましょう。」



壁内侍は私を励ます様に言った。


私が笑顔を返すと、再び室へと歩き出した。



姜賢妃様が心配なさる様な事はきっとない。


私は仮面の軍妃…。


寵妃になる事はない…。


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