四面楚歌-悲運の妃-


威仔は李燗にお茶を渡すと、呆れた顔で口を開く。


「次からは私にちゃんと取り次ぎしてから、入ってくださいね、憧充容様。
ましてや、琴昭儀様はもう陛下の寵を頂いた妃なんですから。
いくら仲が良ろしいとしても、憧充容様もご自分と琴昭儀様のご身分の違…『威仔ッ!』



威仔の言葉を遮る様に、声を大きく言葉を放つ。


威仔は自分が言おうとした事を止められた意味が分からず、「え…?」と小さく声をもらす。


『私が陛下に寵を頂いたからと、大きくなってはなりません。
大きくなれば、後宮に争いを生む元となるのです。

それに私と李燗に身分などという隔たりはない。
お願いです、威仔。
その様な事を二度と思わないで…。』


威仔は私の事を思ってくれているのを分かる。


昨夜も喜んでくれた。


後宮は寵を頂く事で権力を増し、そして権力を振りかざされる場所。

そうする事で女人が上へと昇れる。


その様に思うなど、悲しい事。


威仔には後宮で溢れる感情に染まって欲しくない。


それに、私はそんな事は望んでいない…。


「あ…あぁ…。
申し訳ございません。
私…私…」



泣きそうになりながら、震える声で言葉を絞り出す。


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