四面楚歌-悲運の妃-



そんな威仔を見て、急に李燗が椅子から立ち上がり、威仔と向かい合う。


「貴女の言っている事は、後宮では当たり前の事だし間違ってないと思うわ。
ただ、冥紗はそれを望まないだけ。
責めてるわけじゃないのよ。」


威仔をなだめる様に、背中に手を添える。


李燗に怒られるだろうと思っていたのか、予想外の言葉に威仔は目を見開き、私と李燗を交互に見る。


笑顔を返すと、威仔は頭を深く下げた後、にっこりと笑った。


威仔にもわかって欲しいなんて、私の我儘かもしれない。


でも、後宮に争いを生むのは妃達だけが原因ではない。


女官達の噂や態度も関係している。


だから、わかって欲しかった。



「お、お茶が冷めてしまいましたので、変えて参ります。
憧充容様、ごゆっくりなさってくださいね。」


涙を袖で拭きとりながら言うと、威仔は室を出ていった。


その後ろ姿を見送ると、立っていた李燗が「ふぅー」と息を吐き、椅子に座った。


「後宮に憧れていた頃がなんだか懐かしいわ。
実際は華々しいきらびやかなモノではないのよね…。」


李燗の言った事は、きっと後宮にいる者殆んどが思っている事だろう。


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