四面楚歌-悲運の妃-
∴後宮・舞妃ノ宮
「わぁ〜すごい!
コレが都・黄淋(オウリン)。」
馬車の小窓から外を覗く李燗は、嬉しそうに言った。
私が前に黄淋に来たのは4年前。
あの時は戦で、華やかに見えなかったが
今の黄淋はとても華やかだった。
「即位式が行われるおるゆえ、お祝いでいつもより騒がしいのだよ。」
李燗を退けて小さな窓から都を見て、楚殿は言った。
私達が黄淋に着いたのは、お天道様が真上に登った頃だった。
即位式はもう始まっているんだろう。
もうすぐで、新しい天子様が誕生するのだ。
「もうすぐ黄麟門だ。
それから、後宮に繋がる黄妃門(キヒモン)へ行く。
そこで私はそなた達とお別れだ。」
黄麟門をくぐり、さらに黄妃門をくぐれば、軍妃への道だ。
4年前に角呼国との戦の折に、黄妃門に待機する軍妃達後宮軍を見た。
気品もそなえ、武術もこなした、妃嬪達。
私はこれから、あの折に見た軍妃に、天子様をお護りする為になるのだ。
そう再度、自分の意志を確かめ黄麟門をくぐった。