四面楚歌-悲運の妃-
「陛下の寵妃様とは知らず、お姿だけみて、無礼にも挨拶もお礼も言っていませんでしたので…。
迎親の護衛、ありがとうございました。」
椅子から立ち上がり、深く頭をさげる。
その行動に、慌てて狄洙様にかけ寄り、肩に手をかける。
『あの…お礼を言われる身分ございません。
寵妃と呼ばれるにいたりません。
杞王妃様が頭を下げる相手ではないのです。
ですから、頭をあげてください。』
私の言葉に、ゆっくりと頭があげられ目が合う。
それはすぐに逸らされてしまい、また気まずそうに目を泳がせる。
「あの…女官が言ってました。
琴軍妃将軍様が昨夜、黄麟殿に呼ばれたと…。
それで私、昨日の事申し訳ない事をしてしまったと思って…。」
もう天孫ノ宮にまで、話がまわっているというか?
まだ半日しかたっていないというのに、後宮ならまだしも天孫ノ宮まで…
広い様で狭い…
話はすぐに回ってしまう。
それが宮廷…。
『私は陛下と後宮を守る為にいるのです。
もちろん貴女様や他の宮廷にいるもの皆を守る為に…。
貴女様の迎親をする事、呂貴妃様に失礼だと怒りを買ってしまうのは当たり前なのです。
礼や謝りなど、必要ないのです。』