四面楚歌-悲運の妃-
そうだ…
何故、仮面が取れたのだろうか?
この仮面は、私か冥明様…偉罨様の様な力の強い聖人のみにしか外せない。
それなのになぜ、狄洙様が触れて仮面は反応し、外れてしまったのだ?
狄洙様は聖人ではない…
狄洙様は私の実の姉であるだけ。
…あ…姉?
そうか…。
この理由しかないだろう。
『狄洙様は私の実の姉。
同じ両親から生まれた、同じ血をひく姉妹。
…この仮面は、それを感じとったのかもしれない。
それ故、〔風〕の波動が漏れ、緩やかな風を生み、仮面が外れた…。」
女官である威仔はもちろん、李燗も後宮内で囁かれる噂や情報を良く知っている。
狄洙様が、七神である私を生み出した櫂家である事はもちろん知っていたのだろう。
思い出したかの様に、ハッとした後、李燗が口を開いた。
「冥紗と同じ櫂家の血がながれる杞王妃様の血に、仮面が反応を起こした…という事なのね。」
私が頷くと、威仔も納得した様にゆっくりと上下に何度も頭をふった。