四面楚歌-悲運の妃-
表上いくら皇后が後宮軍を率いる方でも、実際後宮軍を動かすのは、軍妃将軍である私の役目だ。
普通ならば軍妃の修行姿など気にもせぬだろう。
「琴昭儀。
こちらで少しお話いたしませんか?」
崔皇后様に声をかけられ、用意された椅子に腰かける。
にっこりと私に笑いかけると、口を開く事なく再び崙矣達の姿を追いかけた。
しばらく何も話さないで、その光景を眺めていた。
「琴昭儀に…報告と同時に、お願いがあるのです。
まだ、陛下にも話してない事なのですが…」
視線を動かさないまま、崔皇后様は小さな声で言った。
陛下に話してない事を私に?
私が「はい。」と答えると、崔皇后様視線が私の視線と交わる。
崔皇后様は儚げに笑い、その先の言葉を言った。
「御子を…授かったのです。」
さっきよりも小さく囁かれた言葉に、私は目を大きく見開いた。
い、今なんと言われた!?
御子が…
崔皇后様が
懐妊された…!?
「わたくしと御子を護ってて欲しいのです。」