四面楚歌-悲運の妃-
私の手を取り、目に涙を浮かべながら言った。
驚きながらも、その真剣な目を私も見つめ返す。
あぁ、そうか。
陛下に報告をすれば、後宮内に懐妊の情報が広まる。
もちろん、呂貴妃がいる散妃ノ宮までも。
陛下に報告してから、私に護衛する様にと頼むのは、その間に何か仕掛けられでもしたらと、不安なのだろう。
陛下にとって、初めての御子。
しかも皇后腹だ。
皇子であれば、皇太子となる。
呂貴妃も今以上に、私達に何かしてくるだろう。
陛下より先に懐妊を知った事に戸惑いはあるが
崔皇后様の考えは正しい。
実際、陛下に報告してから私が崔皇后様に護衛に付くまで時間がかかる。
そして何より、私を信用してくださっている…。
『この事は今の時点で、他に誰が知っておいでですか?』
私が問いかけると、崔皇后様は連れている女官に目をやった。
「そこにいる鄒(スウ)と御典医の趙(チョウ)殿と、私だけです。」
鄒という女官は、私に向かって軽く頭を下げた。