四面楚歌-悲運の妃-
私は慌てて言葉を返す。
言った事に偽りはない。
私にとって、こうしてお守りできる事が、何よりの喜びなのだ。
笑顔の私に崔皇后様は胸を撫で下ろすと、針を刺しながら言った。
「私が舞妃ノ宮で貴女方を見た時と同じ気持ち、という事になるかしら?」
私が刺繍をするのを初めて見た様に、崔皇后様は軍妃達が鍛練するのを初めて見た。
初めて見る物には目を離せなくなる。
ましてやそれが、自分にとっては当たり前ではない事なら…。
私が頷くと、笑顔を浮かべた。
その時、女官の鄒が室へと入って来た。
「稚皇太后様がお越しにございます。」
え??
稚皇太后様!!?
突然告げられた言葉に、鼓動が激しく打つ。
後宮にきて数ヵ月たつが、稚皇太后様とお会いした事がない。
先帝の最初の皇后に毒を盛り、みずから皇后の座を手にいれた
陛下の実の母上様。
この様な形で、会う事になろうとは…。
崔皇后様は稚皇太后様の突然のお越しに動揺する事もなく、隣の室にお通しする様にと鄒に申し付ける。
崔皇后様の後に続き、隣の室へと移動する。