四面楚歌-悲運の妃-
この方は一見、優しい方に見えても、一瞬垣間見える鋭さは、皇太后まで昇りつめたと感じさせる。
!?
急に稚皇太后様が、私の方を向いた。
「そなたが、仮面の軍妃将軍か?」
私達がこの室に入ってから、私の事など気にしてはおらぬ様に、崔皇后様へ話しかけられたので、突然の事に驚いた。
急いで頭をさげ、口を開く。
『稚皇太后様、お初にお目にかかります。
後宮軍・軍妃将軍・琴冥紗にございます。
崔皇后様の護衛の任にて、同席をお許しを…。』
稚皇太后様は目を細め、私をしばらく見つめると、崔皇后様の手を取り、天蓋内の長椅子まで手を引き座る。
私は邪魔にならぬ様にと、天蓋の端にと足を向ける。
「琴冥紗。
そなたの事は、范夷扶から聞いておる。
歴代の軍妃将軍の中で、もっとも強いとか…。
あの聖人の火聖君も、そなたの強さを誉めたと聞いている。」
そう言うと、天蓋から出て他の椅子へと腰かける。
それを崔皇后様が追おうとすると、手で征した。
手を横に差しのべ、女官が直ぐ様その手に煙管を渡す。
一口吸い、口から吐き出された煙りが天井へと昇る。