四面楚歌-悲運の妃-
[序]


今から始めるお話は、わたくしが他の者から聞いたり、自ら見た事を含めてお話しいたします。


わたくしが、琴 冥紗(キンメーシャ)様とお会いしたのは、冥紗様がまだ11歳の時でありました。

ですが、初めは冥紗様の出生から、この宮歌國(グウカコク)の後宮にお入りになられるまでの、お話しをいたしましょう。



時は填 盈竣(テイ エイシュン)様が黄宋帝(キソウテイ)となり、7年たった宋暦7年。


都より東南の地の村で、冥紗様は産声をあげられました。


冥紗様は金色の光と共に、母上様からお生まれなさいました。


それに父上様も母上様も大変驚かれたそうですが、我が子が生まれた喜びの方が大きく、特に気になされる事はなかったそうです。


冥紗様がお生まれになって半刻たたぬ頃、1人の老師が現れました。


その方の名前を清 胤(セイ イン)様と申し


またの名を清老師(セイロウシ)と申します。


その清老師様は、冥紗様の父上様と母上様に


「その赤子は宮歌国をお守りもうす、聖人なり。
金色の光と共に生まれたのがその証拠。
我ら聖人の一族が、お育てするのが決まりである。
我にその赤子を引き渡して頂きたい。」



< 2 / 390 >

この作品をシェア

pagetop