四面楚歌-悲運の妃-
[序]
今から始めるお話は、わたくしが他の者から聞いたり、自ら見た事を含めてお話しいたします。
わたくしが、琴 冥紗様とお会いしたのは、冥紗様がまだ11歳の時でありました。
ですが、初めは冥紗様の出生から、この宮歌國の後宮にお入りになられるまでの、お話しをいたしましょう。
時は填 盈竣様が黄宋帝となり、7年たった宋暦7年。
都より東南の地の村で、冥紗様は産声をあげられました。
冥紗様は金色の光と共に、母上様からお生まれなさいました。
それに父上様も母上様も大変驚かれたそうですが、我が子が生まれた喜びの方が大きく、特に気になされる事はなかったそうです。
冥紗様がお生まれになって半刻たたぬ頃、1人の老師が現れました。
その方の名前を清 胤様と申し
またの名を清老師と申します。
その清老師様は、冥紗様の父上様と母上様に
「その赤子は宮歌国をお守りもうす、聖人なり。
金色の光と共に生まれたのがその証拠。
我ら聖人の一族が、お育てするのが決まりである。
我にその赤子を引き渡して頂きたい。」