四面楚歌-悲運の妃-
崔皇后様に気を使って、天蓋から出られたのか…。
「崔皇后をしっかり護られよ。
そなたには期待しておる、いろいろ…とな。」
『…は、はい。』
いろいろ?
意味ありげな視線に、違和感を感じた。
何に対して、稚皇太后は私に期待をしている…?
煙管の灰を器にと落とし、椅子から立ち上がった。
「体には気をつけてられよ、崔皇后。
その御子は、なんとしてでも無事に生んでもらわねば困る。
義母としてこの稚妙(チミョウ)、いつでも力になろうぞ。」
長く垂れ下がる裾を翻し、出口の方を向くと、横目で私を見てほくそ笑み歩き出す。
それを見て急いで崔皇后様は立ち上がり稚皇太后様を見送る。
私も崔皇后様の傍らで、稚皇太后様の去っていく背中を見つめた。
「過去にいろいろありますが、皇太后様は私にとっては、本当にお優しい方なのです。
琴軍妃将軍には、皇太后様はどう見えましたか?」
もう稚皇太后様の後ろ姿が見えぬのに、廊下の先を見つめたまま私に問う。