四面楚歌-悲運の妃-
ほんの数刻たらず会って会話をしただけでは、わからない。
と、言うのが本音だ。
確かに、稚皇太后様は崔皇后様に対しては優しい方であるようだし、気に入っている様だった。
[妾が選んだ皇后]
と言っていたし、自らが選んだ皇后を気に入らない訳がない。
崔皇后様を選んだのが、稚皇太后様であったのは、初めて知った。
「やはり…少し話しただけでは、わからない方ですわよね。」
考え込んでしまって答えを返さないでいた私に、崔皇后様は言った。
自らもそうだったのだと、言葉から通じる。
なぜ稚皇太后様が、呂貴妃よりも上へと昇る事が出来たのか、わかる気がする。
呂貴妃は感情が表にでやすい。
良く言えば素直な方なのだが、この後宮という戦場の上では、戦術を読まれてしまう。
稚皇太后様の場合は、わかりやすそうでわかりにくい。
惑わされているうちに、稚皇太后様の戦術にまんまとはまる…。
『あの方が呂貴妃より、確固たる地位を得たのは、わかる気がします。』
崔皇后様は目を細めて頷くと、踵を返し部屋に入る。
続いて部屋に入り、もう一度入口を振り向く。
稚皇太后様が最後見せた、あの笑顔はなんなのだろうか?
稚皇太后様という方を知るには、時間がかかりそうだ。