四面楚歌-悲運の妃-
∴始まりの鐘・惑
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「では、これより私共が護衛をいたします。」
空が朱色に染まった頃、皇后宮へ晏惟と梛犀が来た。
私と護衛を交代する時間だ。
晏惟が崔皇后様に護衛をするにあたり、挨拶を交わすのと逆に、私は退出する言葉を言う。
労いの言葉を言ってくださる崔皇后様に、最後に頭を下げ室を出る。
去り際に、晏惟と梛犀に[崔皇后様を頼む]という意味をこめて目配せすると、2人は頷いた。
皇后宮の外に出ると、室の中にいて遮断されていた光が目に射し、目を細める。
どこまでも赤く広がる空が、これからの事を表している様で、不安が過る。
この空の様に、これから血が流れなければいいのだが…。
「ご苦労様です、琴軍妃将軍様。
いえ、琴昭儀様。」
空を仰ぐ私の目の前に、影がかかったかと思うと、声をかけられた。
声の方に視線を向けると、そこには壁内侍が立っていた。
「お疲れかと思いますが、陛下が呼んでおられますので、こちらへ。」
私の返事を聞かず、背を向けて歩き出す。
陛下が私を呼んでいる?