四面楚歌-悲運の妃-



突然の壁内侍の言葉に、私はついていくしかなく、後を歩く。


皇后宮からは黄麟殿をつなぐ渡り廊下と、黄麟ノ宮をつなぐ渡り廊下と両方があり



壁内侍が向かったのは黄麟殿へ行く渡り廊下だった。



渡り廊下を半分程渡った所で、壁内侍は口を開いた。



「皇后様が懐妊し、皇后様だけに狙いを定められるとは限らない。
同じ様に陛下もこれまで以上に、命を狙われるでしょう。
私や范丞相にとって、陛下と琴昭儀様がご一緒におられる事は安心です。
あなた様はこの後宮で誰よりも強いお方だ。」



壁内侍が言う通り、万が一崔皇后様と御子に何かあったとしも、陛下自身が健在では、呂貴妃の陰謀は成立しない。


御子が生まれる前に、陛下を亡き者にすれば、次帝は恢長公子だ。

私達軍妃は、後宮軍であり崔皇后様の指揮下。


戦が起これば、国の為に戦うが、普段の陛下には近衛兵がついている為、陛下が後宮に来た時のみなのだ。



「ただ…」


え?
さっきよりも低く放たれた言葉に、思わず足を止める。


壁内侍も同じ様に足を止め、私の方を振り向く。


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