四面楚歌-悲運の妃-
見据えられた瞳には、優しさなどなく、それはこの後放たれたる言葉を物語っていた。
「あなた様は陛下と皇后様の盾に過ぎないのです。」
いつも優しい壁内侍の言葉とは思えなかった。
向けられた言葉と瞳は私の体をさらに硬直させる。
私が陛下の盾など、生まれた時から決まっていて、わかっていた事。
聖人の村を離れ、軍妃になってからも、盾である事を忘れた事はない。
「その仮面さえなければ…、あなた様は陛下に相応しい。」
さっきとは違い優しい面立ちで、小さく呟く様に壁内侍は言った。
そっと自らの仮面を触れる。
もう1年近く後宮にいて、この仮面で何かを言われたりする事は慣れていた。
この仮面をしているが故、陛下にもご迷惑をかけてしまうと、覚悟をしていた。
だからこそ、私は陛下を護り、皇后様を護り、軍妃としてだけでも恥ずかしくもない様にと思っている。
「勘違いはしないでください。
私は琴昭儀様を嫌っている訳ではないのです。
ただ、まわりは琴昭儀様の事をそう思っている事を知っていてください。」
そう言うと、また足を進めた。
ま…わり…?