四面楚歌-悲運の妃-
まわりというのは、范丞相や稚皇太后やその他の人達?
壁内侍は少なからず、私を心配して言ってくれたのだろうか?
それならば心配は無用だ。
私は構わない。
盾なのは逃れられぬ宿命だ。
『ご心配ありがとうございます…。』
小さな声で囁くと、壁内侍は一瞬肩を小さく揺らした。
すぐに何もなかった様に前を進む。
「いい忘れてました。
范丞相もご一緒におられますので。」
黄麟殿を目の前にして、壁内侍が思い出した様に言った。
范丞相が陛下とご一緒におられる事は、驚く事でもない。
范丞相に呼ばれたのに、陛下がおられたり
陛下に呼ばれたのに范丞相がおられたり
良くある事だ。
「…それと…。」
予想をしていない続きの言葉が、紡がれる。
「左丞相、江洵子(コウジュンシ)様もご一緒です。」
左丞相…!?
今まで会う事がなかった左丞相が?
左丞相である江洵子は、控えめでおとなしく、置物の左丞相と言われている。
年齢は范丞相よりも上で、同じく先帝の時よりの左丞相。