四面楚歌-悲運の妃-
同じ丞相であるが、権力に違いはある。
范丞相は正宰相であり、政を仕切り、陛下からも信頼がある。
江丞相は副宰相であって、政は范丞相にまかせっきりで、良く体調をくずされ朝政にも休みがちだと聞く。
壁内侍につれられ、陛下達がおられる室に入る。
「琴軍妃将軍様をお連れ致しました。」
壁内侍の言葉に合わせて、頭をさげる。
すぐに優しい声がかかり、頭を上げると、椅子に座る陛下と范丞相、そして江丞相と思われる人物が目に入る。
あの方が江丞相…。
江丞相よりも年が下な上に、年よりも若く見える范丞相の隣にいるせいなのか、か弱く老けて見える。
鼻の下に生える髭も髪の毛も、白と黒が混ざり合い灰色に見える。
この方が范丞相の次に権力を持つ文官…。
私の視線を受け、江丞相が一歩前に出て口を開いた。
「お初にお目にかかります、琴軍妃将軍様。
長く伏せっており宮中に参内せず、家中から政に携わっていた故、中々お会いして挨拶申し上げられませんでした。
江洵子でございます。」