四面楚歌-悲運の妃-
真っ暗な空間にいるのに、崙宝も俚督の顔もはっきり見える。
こ…れは…。
崙宝の影の域にいるというより、地上に影の域を創り出した物だ。
それ故、外側からは球体の影が私達を覆っている様に見える。
『崙宝…何するつもり?』
話しをする為だけに、こんな事をしたと思えない。
手合わせするふりを嫌なだけじゃない…
真っ直ぐ崙宝を見据え、答えを待つ。
「久しぶりに顔が見たい。」
崙宝の目的はそれ?
この空間は崙宝の域だ。
私が仮面を取っても、聖人の気が外へもれる事はない。
仮面をゆっくりと外し、崙宝に顔を見せると、思ってもみない言葉が返ってくる。
「否…。」
え?
私達の様子をただ眺める俚督も首を傾げる。
崙宝の手が私に触れると、言葉が続けられる。
「その姿も美しいが、その姿ではない。
本当の姿が見たい…。」
!!?
体が揺れた。
それ故…この空間を創ったのか!?
頬にあった手は下降し、鎖骨までいく。
『ま、待て!ろッ「解」
止める私の言葉に、崙宝の言葉が重なった。