四面楚歌-悲運の妃-
鎖骨の中心にある、朱い華に熱が集中し、まわりに白い煙りが漂う。
な…んて…ことを!!
体が熱い…。
視界が歪む…。
自然と瞼が閉じ、ガクリと膝が折れ、地面に膝を着く。
ああ…この感覚はどのくらいぶりだろうか…。
抑えていたものが解き放たれた…この感覚。
私を取り巻く煙りが薄れていくと同時に、体の熱は冷める。
ゆっくり瞼を開けると、無表情の崙宝と目を見開く俚督が見えた。
「美しき壮観なり…」
そう呟き手を差しのべる崙宝が、うっすらと笑みを見せる。
そうだ…崙宝は昔から、私のこの姿にだけ笑いかけた。
封印されたこの姿にだけ…。
手を取り立ち上がり、崙宝の前にしっかりと立つ。
「より一層美しく成長したその姿…。
偽りの姿は辛かったであろう?
聖人一族が隠してきた、惑わす程美しい生姫の真実の姿…。」
地面につく程伸びた髪をひとふさ手に取り、先ほどまでとは違う優しい声色で言う。
この姿になったのは、どれくらいぶりであろうか?
決して見せてはならぬ、人とは思えぬこの姿…。