四面楚歌-悲運の妃-
この姿は聖人の村の者しかしらない。
肌は青白く、長く地面まで垂れ下がる薄紫の髪。
偽りの姿とは似ても似つかない。
人とは言えぬこの姿もたま、生姫が背負う性(さが)。
朱い華の印はその封印のしるし。
赤子の頃より、この印は私に刻み込まれ、聖人の村を一歩でも出れば、この姿は封じ込まれる様になっている。
この印を一時的に解く事は、聖人ならできるが、完全に解く事が出来るのは聖大神のみ…。
呆然と立って眺めていた俚督は、我に返ったのか急いで私と崙宝の所まで来る。
「崙宝…気持ちがわかるが…掟に反するぞ。」
私を見つめた後、崙宝に向き合い俚督は言った。
「ここには吾と俚督しかおらぬ。
掟には反していない。
外にかえる時には、また封じる。」
崙宝の無表情な返答に、俚督は押し黙った。
その様子を確認すると、また私に向き直り口を開く。
「偉罨様は本当はその印を解いてやりたいといと、申しておった。
しかし、さすれば冥紗は清老師に気付かれ、村へと戻されてしまうだろう。
しかしなぜ、解いてやりたいと思っているかわかるか?」