四面楚歌-悲運の妃-



偉罨様が印を解きたいと…?

それこそ掟を破る事だ。


ましてや聖大神自らがその様な事を…


否、すでに偉罨様は私の為に掟を破っている。


私をこの後宮に留まらせてくださっている…。


私を想ってくださる、優しい偉罨様だ…。


私を縛るすべてを解いて、陛下の妃として過ごして欲しいと思ってだろう。


しかし、私はこの姿を陛下に見せる事は出来ない…。


この姿を見て、陛下が私を嫌いになられるかもしれぬという心配ではない。


この姿は…



答えを返さないでいると、崙宝は再び口を開いた。


「冥紗の心を、偉罨様は分かっておられるのだ。
時期に成長がとまり、死する時までその美しき姿は変わらぬ…。
偽りの姿なれば老いる。
それ故、印を解く事を冥紗が望まぬ事を…。」



そう…。


私の成長は時期にとまってしまう。


おなじ性をもつ冥明様も、真実の姿は齢91には見えぬ若い娘の姿なのだ…。


私も冥明様もこの印がある限りは偽りの姿のままでいられる。


陛下に何か起こっても、仮面さえ取ればお護りする力はある。


故に何の支障もない。



しかし偽りの姿であっても、皇帝と謁見してはならぬ掟


その上、この姿だ…。


私を縛るすべてのものがなくなってしまえばと、思う気持ちが無いわけではない。


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