四面楚歌-悲運の妃-
それを見た欺軍妃将軍は、合図を送る。
一斉に私の前に50人が立ち向かった。
「はじめッ!」
欺軍妃将軍の言葉で開始される。
50人…
私の相手には
―――――少なすぎる。
一気に50人の間を走る。
そう
こんなのは
一瞬で終わる。
最後尾に足をつけると、その場が沈黙した。
50人が次々に倒れる。
普通の者なら数秒の出来事にしか見えない。
私を目で追う事も出来ない。
これが、聖人として育てられた私の力。
静まりかえる中、欺軍妃将軍が口を開いた。
「み、…見事だ。
そなたの様な軍妃は見た事がない。
楚殿が無理にでも、連れて来た意味がわかった。
琴冥紗、そなたを軍妃候補と認めよう。」
欺軍妃将軍に深々と頭を下げ、李燗達がいる所へ戻る。
悒雉の顔が目を見開いたまま動かない。
知っている李燗は、笑顔で迎えてくれた。
予想外だったのは、いつも無表情の崙矣が顔歪ませていた。
「冥紗…。この先修行をしても、きっとそなたには追い付けぬな。」
そう言って崙矣は、歪ませていた顔を悲しく微笑ませた。