四面楚歌-悲運の妃-
范丞相と江丞相もやっと状況把握が出来たのか、私の言葉に従い陛下を伴い黄麟城の中へ急ぐ。
崔皇后様も悒雉と崙矣に護られ、陛下達の後を追う。
炎の燃え上がる方へと視線をやりながら、私も黄麟城の中へと向かった。
私達が黄麟城の中へ入ると、近衛達が安全を確認をするために外へと出て行く。
皆無事で良かった。
体の力を抜くと、急に肩に再び痛みを感じる。
く…ッ
弦をひいたせいか、肩は血に染まっていた。
ここで抜いては、黄麟城の床を血で汚してしまう。
とりあえず動きやすいように、箆の部分を折っておこう。
時間がたてば傷口が収縮し、矢を抜きにくくなってしまうが、手当ては後でいい。
これぐらいの傷なら慣れている。
『冥紗ッ!』
箆の部分を手折り、息を深く吐いていると、大きな声が私を呼んだ。
声の主は顔を歪め駆け寄ってくる。
陛下…。
「血が滲んでいるではないか!?
早く手当てをッ…
范夷扶!御典医を早急に呼べ!」
焦る陛下の言葉に、范丞相は一瞬うろたえるも、呼びに行こうと足を踏み出した。
『お待ちになってください!
私は大事ありませんから…。
まだ刺客がどうなったのかわからぬのです。
せめて近衛達が戻ってくるまでお待ちを…。
』