四面楚歌-悲運の妃-



布地は血に浸食され真っ赤に染まり、やがで血は侵食を続け、床に滴り落ちる。


床の赤い液体を見つめながら歯を食いしばった。


痛みに感覚を奪われるとは、情けない。


この先、この傷よりも深い傷を負うかもしれないのに、この程度で…


血は赤黒く、聖人とはいえ私はただの人間なのだ。


心配そうに私を覗き込む御典医に支えられながら、椅子に腰かける。


「無茶をなされますな。
私が陛下に怒られてしまいます。」


御典医溜め息まじりにそう言うと、素早く傷を手当てをした。


威仔に頼んで新しい衣装を持ってきてもらい、血に染まった上衣を取りかえねば。


御典医にお礼を言い、急いで崔皇后様の寝所に戻る。



寝所に入ると、崔皇后様はお休みなになられている様だった。


鄒に威仔を呼んでもらわなくては。


鄒に話かけようとすると、先に鄒が言葉を発した。


「どうぞこちらにお着替えになってください。
急なご用意だったので、守ってくださったお礼にはならなりませんが、受けとるようにと、崔皇后様からご伝言です。」


そう差し出され衣装は急に用立てたとは思えない物だ。


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