四面楚歌-悲運の妃-


それだけではないと言うのは…?

問いかける様に鄒に視線を送ると、私に優しく笑いかけた。


「貴方様にはこれから、たくさんの感謝をする事になるだろうからと、言っておられました。
貴方様だけではございません。
四天王様方の分も…。
崔皇后様もただ護られるだけのご自分を歯痒く思ってらっしゃるのです。
これぐらいの事しか出来ないご自分を…。」


そう言って悲しい笑みを浮かべ、寝台で眠る崔皇后様を見た。


たくさんの感謝をする事になる…

それは護衛をするにあたって、私や四天王が体を張って、皇后様とまだ見ぬ陛下の御子を護る事。


私や四天王にとっては、この後宮の主であり、国母である皇后様をお護りする事は、軍妃として光栄な事だ。


例えそれで命を落とそうとも…。

忠誠心は時には相手を苦しませてしまう。


お優しい崔皇后様は、出来れば自らのせいで、誰かが傷ついたり、命を落としてほしくないと…


しかし護らねばならぬ命がある。

それ故、痛む心に蓋をし護衛を頼んだ。


今崔皇后様のお心は、護らねばならぬ命の為の犠牲は致し方無いと思わねばならぬ気持ちと、私たちが傷ついて欲しくないという気持ちが葛藤しているのだろう。


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