四面楚歌-悲運の妃-


寵愛の証…?


妃達の間で、桔梗の刺繍にそんな意味のあるものだとは、知らなかった。


後宮内の噂は私は疎い方ではあるが、威仔は知っているかもしれない。


しかし…


『その様な意味があるなれば私は着る事が出来ません…。』


皆が私を陛下の寵妃だという。


しかし私はまだ2度程、陛下と共に夜を過ごしたに過ぎない。


「他の妃様方は陛下が物珍しさに呼んだと言っている様ですが、私達は皇太子のおりから陛下をご存じ上げております。
陛下は大変、ご警戒されるお方です。
貴女様は、その陛下が二度も閨に呼ばれた御身。
それが寵妃なのか否なのかは、一目瞭然。」



真っ直ぐ私を見つめて言う鄒は、最後に「心配なされますな。」と言った。



寵妃と呼ばれて嬉しくない妃が居ようか?


その証とも言われる桔梗の刺繍を着れる事は、どんなに嬉しい事か…


しかし素直に喜べぬのも事実。



私の傷を気遣った陛下を見た崔皇后様の、悲しそうなお顔が過る。


鄒はなぜ私にこの様な事を言ってくれるのだ?


崔皇后様はなぜ、私にこの様な事をしてくださるのだ?




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